長崎で土をこねて版築を作りながら念う

土というありふれた素材で
古代より続く構造体を実際に作ってみた

そして耐震的には
期待できないのかもしれないけど
それでも土のもつ魅力は捨てがたい

今回はあえて全て手作業で

手作業で型枠を作り

スコップで土を掘り起こし
一輪車で運んで
そして土をふるいにかける


たくさんとってきても礫などは
取り除かれて容積が少なくなっていく

その土をトロ箱で砂と混ぜる

土だけでももちろんいい
調合を変えていろいろ試す

土もいくつかの場所で
採取して試してみた

消石灰を混ぜたりしながら
極力最後は土に戻る構造体として

混ぜる

混ぜる

なんという重労働

現代の我々は
機械に慣れ過ぎてしまった

たったこの小さな箱を埋めるのに
こんなにも時間がかかるなんて

それでもしあわせなひと時を過ごす

現代世界ではあり得ないこと

土を使って壁を立ち上げるのだから
そこには工場生産されたものはなく

その土地の土で立ち上がったもの
確かにそれは雨にも弱く
揺れにも弱い

しかしその立ち上がった塊のもつ精神性は
そんな物理的な力を凌駕する

壊れようがどうした?
何を恐れている?

彼らは云う

我々現代人の
記憶のDNAに刻み込まれた
かすかな土のエネルギーを
読み取って増幅される

そしてその悠久の時間には
現代世界が信奉している
表面的な技術神話は脆くも崩れ去る

我々は何を怯えているのだろう?

我々は何に住んでいるのだろう?

我々は何を
構造体に使っているのだろう?

今一度、この令和の時代に


精神、魂の拠り所としてのイエのあり方を
巨視的なスケールを使って語らせても良いと

そんなことを念った版築の作業

それにしても気持ちいい風が印象的だった